アリスズc
∞
エインは、背負われているテテラを見て、そして足が一本足りないことに気づいたのか、気まずそうに目をそらした。
そらした先には、イーザスの危険な色をはらむ目があって、余計に困惑したようだ。
シェローは、荷馬車に乗って行ってしまい、彼らは一人加えて再び都を目指すこととなった。
桃が、何の話をしたらいいのか、考えあぐねている時。
「モモさんと、よく似てらっしゃるのね…」
先に口を開いたのは、テテラだった。
「はい。血縁です」
エインは、迷うことなく返事をする。
だが、その言葉は非常に曖昧な表現だった。
血縁。
姉とは、呼んではくれないようだ。
しょんぼり。
やはり彼からすると、桃の存在はその程度にしか言葉に出来ないのだろう。
いくら父が、自分の娘だとどこで誰にでも名乗っていいと言ったとしても。
「あら…じゃあモモさんは、貴族の娘さんになるのかしら?」
テテラは、非常に素朴に、そして痛い一撃を言ってくれた。
エインの髪の長さから、貴族の血筋という推測を。
そんな彼の血縁ということは、桃もそうかと推測されたのだ。
すばらしきかな、寺子屋制度。
理論だてた思考が、しっかりと身についていらっしゃる。
「あ、いえ…私は…遠くの遠くの…」
桃が、慌ててごまかそうとした瞬間。
「モモは、テイタッドレック家の一人娘ですよ」
よどみなく。
エインが、しゃべってしまった。
「テイタッドレック家の跡取りはあなたでしょ!」
驚きの余り、声が裏返る。
「そう、私はあの家の跡取りだ。しかし、モモは父上の一人娘だ」
それだけは譲れないとばかりに、彼は頑固に言い連ねた。
反射的に、エインと睨みあう形になってしまった。
くすくすと笑ったのは──テテラ。
「仲がいいのね」
そう、見えますか?
意思の疎通も出来ていないし、うちとけてもいない。
どうやったら、世間の姉弟のような仲良しになれるのか、いまの桃にはまったく想像も出来なかった。
エインは、背負われているテテラを見て、そして足が一本足りないことに気づいたのか、気まずそうに目をそらした。
そらした先には、イーザスの危険な色をはらむ目があって、余計に困惑したようだ。
シェローは、荷馬車に乗って行ってしまい、彼らは一人加えて再び都を目指すこととなった。
桃が、何の話をしたらいいのか、考えあぐねている時。
「モモさんと、よく似てらっしゃるのね…」
先に口を開いたのは、テテラだった。
「はい。血縁です」
エインは、迷うことなく返事をする。
だが、その言葉は非常に曖昧な表現だった。
血縁。
姉とは、呼んではくれないようだ。
しょんぼり。
やはり彼からすると、桃の存在はその程度にしか言葉に出来ないのだろう。
いくら父が、自分の娘だとどこで誰にでも名乗っていいと言ったとしても。
「あら…じゃあモモさんは、貴族の娘さんになるのかしら?」
テテラは、非常に素朴に、そして痛い一撃を言ってくれた。
エインの髪の長さから、貴族の血筋という推測を。
そんな彼の血縁ということは、桃もそうかと推測されたのだ。
すばらしきかな、寺子屋制度。
理論だてた思考が、しっかりと身についていらっしゃる。
「あ、いえ…私は…遠くの遠くの…」
桃が、慌ててごまかそうとした瞬間。
「モモは、テイタッドレック家の一人娘ですよ」
よどみなく。
エインが、しゃべってしまった。
「テイタッドレック家の跡取りはあなたでしょ!」
驚きの余り、声が裏返る。
「そう、私はあの家の跡取りだ。しかし、モモは父上の一人娘だ」
それだけは譲れないとばかりに、彼は頑固に言い連ねた。
反射的に、エインと睨みあう形になってしまった。
くすくすと笑ったのは──テテラ。
「仲がいいのね」
そう、見えますか?
意思の疎通も出来ていないし、うちとけてもいない。
どうやったら、世間の姉弟のような仲良しになれるのか、いまの桃にはまったく想像も出来なかった。