アリスズc

 リリューは、父と向かい合っていた。

 最初に、話すべきだと思ったのだ。

「そうか…」

 父は、小さくうなずいた。

 テルの直属として、月の一族との戦いに参加します、と。

 そう、伝えたのだ。

 軍令府を束ねる最高位の、武の賢者。

 それが、父の肩書。

「弟殿下は、武の王になられる気なのだろうな」

「そうでしょう」

 それについて、リリューに異論があるはずがない。

 テルが目指すものは、明らかに思えた。

 強い国。

 彼は、それを目指している。

「その王に…ついてゆくか?」

 だが。

 次の言葉は、息子に向けられた。

 これから、リリューはどうするのか、と。

 たくさんのことを、考えた。

 それを、考えるきっかけを作ってくれたのが、彼女だ。

 考え抜いた結果。

「命ある限り、剣の道を究めたく思います」

 リリューは結局、この答え以外を見つけることは出来なかった。

 すると。

 ふっと力を抜いたように、父が微笑んだ。

「お前らしいな」

 母のように奔放ではなく、父のような忠臣でもなく。

 一歩一歩進んで行く以外、リリューの道はない。

「その言葉は、きっと弟殿下にも通じるだろう…何しろ、あれの弟子だからな」

 あれ。

 それは、父の妻にして、リリューの母である強い女性のこと。
 
 家族への心配は、何一つしていない。

 ただ。

『彼女』に、この話は通じるだろうか。

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