アリスズc

 武の賢者宅。

 ここに、ひとつの再会があった。

「ああ、ロジア様…」

 眩しいものを見る瞳で、テテラは彼女を見ていた。

「テテラフーイースル、もう様はいらないわ。私は、ただのこの子の母だもの」

 テテラの都入りを、最初から聞かされていたロジアは、驚くことはなく微笑む。

「よかった、ロジア…幸せになったのね、見つけられたのね」

 杖で歩いていることを忘れるほど、慌てて歩み寄ろうとしたため、バランスを崩しそうになって踏みとどまる。

 そんな睦まじい再会の様子は、周囲の空気を和やかにした。

 しかし、同時に崖っぷちに立ったということでもある。

 ロジアが生きていることを、テテラが知った。

 それだけならばまだいいが、テテラにはイーザスという男がつきまとっている。

 ロジアが生きている──それが、イーザスに伝わってしまったら、港町のあの努力はフイになってしまう。

 ということは、だ。

 ユッカスという首領格の男を、近いうちに何としても倒さなければならなかった。

 そのためには、それ以外の邪魔を、排除しておかなければならない。

 天の賢者だ。

 エンチェルクは、キクに手紙を送ったのと同じように、ヤイクにも手紙を送った。

 天の賢者は、彼の叔父だ。

 何かあったら、まずあの男に動いてもらう必要があった。

 そう、ウメも言っていたではないか。

『男を見せろ』と。

 いまは、モモとヤイクを信じて、待つ時だ。

「ああ、まるで夢のようだわ。やはり、ここは太陽の都ね…足も出来るし、ロジアにも会えるなんて」

 願い事が、全部かなうなんて。

 そんなテテラの言葉に、エンチェルクはこう思った。

 願いは、かなったんじゃない。

 皆でロジアを生かして連れ出し、モモとリリューがテテラを連れて戻り、ウメとキクが彼女の足を作る手はずを整えて、ついに再会したこと。

 そう。

 かなえる努力を、誰ひとり怠らなかっただけなのだ。
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