アリスズc

 ハレは、ホックスやモモと話したがった。

 学問的な話だったり、モモの母の話だったり。

 こういう話になると、リリューは無用の長物だった。

 ただ、背が高いだけのそこらの木と変わらない。

 ただ、木と違うのは、聞くことができること。

 ハレは、あらゆる知識を欲しがっていた。

 それが、タブーを乗り越えるものであったとしても。

 そして、話からホックスのひととなりも伝わってくる。

 学問の話になると、彼は多弁になる。

 そして、ハレの振る夜や月の話にも、嫌がることはなかった。

 なるほど。

 リリューは、人選の的確さに感心した。

 確かにこの三人であれば、夜の話が出来るだろう、と。

 旅の間、いつも宿に泊まれるわけではない。

 夜。

 月や星の下で眠ることも多いのだ。

 ハレやホックスは、天文の話を夜遅くまで続けることもあり、時折リリューに心配させた。

 何故なら、彼らは学術肌で。

 決して、体力があるわけではないのだから。

 事実。

 ホックスは、最初大荷物を持っていたが、隣領についた時点で、既にその荷はリリューが背負っていたのだ。

「助かる」

 貴族の子の、それが感謝の言葉。

 マシな方なのは、リリューも気づいていた。

 一般市民に向かって、感謝しない貴族など、当たり前のようにいるのだから。

 最初に――力尽きたのは、予想通りホックスだった。

 街道の途中で、ハレに止められる。

「熱が出ているようだな」

 言われた途端自覚したのか、ホックスはふらついた。

「休ませよう」

 ハレは、木陰を指差す。

 これが、初めての予定外の休息となった。
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