アリスズc

 たくさんの屍を乗り越えて、ハレは『そこ』へ向かおうとしていた。

 前を歩くのはトー。

 横を歩くのはコー。

 もはや、敵はほぼ壊滅状態で、兵士たちが残党狩りをしている。

 テルが派手に燃やしたらしく、あちこちの火はまだ消えきれておらず、熱といやな匂いに包まれていた。

 トーの行き先は、洞窟だった。

 火口の壁に、横穴が開いているのだ。

 その洞窟の入口には、本当に多くの人間が倒れていた。

 必死で守ろうとしたのだろう。

 入口で、コーが音を落とす。

 中に、人がいるかどうか確認したのだろう。

「何人か…いるみたい」

 その言葉に、ハレは髪を両手に巻いた。

 洞窟へ歩み入る。

 さっきまでの壮絶な景色が嘘のように、中は冷ややかだった。

 自分自身の持つ強い光は、暗がりでは良い灯りとなる。

 わざわざ火をともす必要はない。

 そんな洞窟を、慎重に歩く。

 ゆるやかな曲線を描く道筋の奥に、その光はあった。

 遠くからでも、はっきりと分かる光が中央に座っている。

 知っている光だった。

「やっと来たな、ハレ」

 テルだ。

 自分の光と、とてもよく似ているそれは、兄弟の証。

 少し高くなっているところがあるようで、腰掛けて自分たちを待っていたのか。

「『場』とやらを探していたんだが、ここで行き止まりだ」

 テルの両側に、男が二人。

 ビッテとリリューだ。

「トーなら知ってるんだろう? どこに『場』とやらがあるか」

 事情を知る者に、ハレは声を投げる。

 トーは。

 簡潔に、こう言った。

「尻の下だ」

 テルが座っている場所の、下だと。

「おっと、それは失礼したな」

 全く悪びれもせず、弟はそこから立ち上がったのだった。
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