アリスズc
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リリューは、兄弟の会話を奇妙な気持ちで見ていた。
太陽と月の戦いは、確認するまでもなく月側のほぼ全滅で終えようとしていた。
テルは、その事実を当然のこととして受け止めた後、部下から報告のあったこの洞窟へと来たのだ。
ここが、月の一族の一番大事なところだろうと言うのだ。
既に屍となった者たちが、一番厚く、ひたすら守りに徹していたところ。
暗いその中で、兄弟は再び顔を合わせる。
石のフタが開くと、いくつもの小さな星が姿を現した。
そんな美しいきらめきよりも、テルは兄に告げたのだ。
永遠に裏切らないか。
それが、奇妙なのだ。
彼らは双子で、そして後継者争いもなく穏便にここまで来た。
そんなハレが、どうして今更テルやイデアメリトスを裏切る要素があるというのか。
テルの中には、兄が自分を裏切るかもしれないという思いもあったのか。
ハレは、薄く微笑んだように見えた。
「無意味な質問だよ、テル。僕は、テルが裏切らせるようなことをしなければ、そんなことは絶対にしない」
賢い答えだ。
事情が変わらない限り、裏切ることはない。
何もかも盲目で信奉せよ。
そんなことを望まれても、答えられるはずなどなかった。
「ああ、そういう意味じゃない」
テルは、片手を振って兄の言葉を一蹴する。
「俺は、ハレにいまより大きい自由を渡すことを考えている…だからこそ、念を押しているんだ。その自由を、どこかでうっかり履き違えられたら、俺は何度死んでも死にきれんからな」
奇妙な、本当に奇妙な言葉。
まるでテルが先に死ぬかのような──ああ。
そうか、テルは死ぬのか。
彼の言わんとしていることに、リリューはほんの少しだけ触れた気がした。
いまや、近い未来という話ではない。
しかるべき時が来たら、テルは死ぬ。
テルが死ぬ時は、ほぼハレの死ぬ時と同義だ。
その同義を。
次代の太陽は、崩すと言っているのではないだろうか。
リリューは、兄弟の会話を奇妙な気持ちで見ていた。
太陽と月の戦いは、確認するまでもなく月側のほぼ全滅で終えようとしていた。
テルは、その事実を当然のこととして受け止めた後、部下から報告のあったこの洞窟へと来たのだ。
ここが、月の一族の一番大事なところだろうと言うのだ。
既に屍となった者たちが、一番厚く、ひたすら守りに徹していたところ。
暗いその中で、兄弟は再び顔を合わせる。
石のフタが開くと、いくつもの小さな星が姿を現した。
そんな美しいきらめきよりも、テルは兄に告げたのだ。
永遠に裏切らないか。
それが、奇妙なのだ。
彼らは双子で、そして後継者争いもなく穏便にここまで来た。
そんなハレが、どうして今更テルやイデアメリトスを裏切る要素があるというのか。
テルの中には、兄が自分を裏切るかもしれないという思いもあったのか。
ハレは、薄く微笑んだように見えた。
「無意味な質問だよ、テル。僕は、テルが裏切らせるようなことをしなければ、そんなことは絶対にしない」
賢い答えだ。
事情が変わらない限り、裏切ることはない。
何もかも盲目で信奉せよ。
そんなことを望まれても、答えられるはずなどなかった。
「ああ、そういう意味じゃない」
テルは、片手を振って兄の言葉を一蹴する。
「俺は、ハレにいまより大きい自由を渡すことを考えている…だからこそ、念を押しているんだ。その自由を、どこかでうっかり履き違えられたら、俺は何度死んでも死にきれんからな」
奇妙な、本当に奇妙な言葉。
まるでテルが先に死ぬかのような──ああ。
そうか、テルは死ぬのか。
彼の言わんとしていることに、リリューはほんの少しだけ触れた気がした。
いまや、近い未来という話ではない。
しかるべき時が来たら、テルは死ぬ。
テルが死ぬ時は、ほぼハレの死ぬ時と同義だ。
その同義を。
次代の太陽は、崩すと言っているのではないだろうか。