アリスズc
∞
「母は、本当に植物が好きでね」
桃が、ホックスを休ませていると、ハレが自分の荷を解いた。
ハレの母――太陽妃でもあり、桃の母の数少ない同胞。
「よく、母と一緒に宮殿の温室へ行ったよ」
荷の中から、紙の包みを取り出す。
それを、ハレはつらそうなホックスに差し出すのだ。
「体力が落ちているせいで熱が出たのだろう…母直伝の薬草だ」
あ。
包みが開かれた時、知っている匂いがした。
熱を出した時、母が自分に飲ませる薬だったのだ。
独特の匂いなので、決して間違えない。
そっか。
太陽妃の薬に、桃もお世話になっていたのだ。
匂いに、ホックスは顔をしかめる。
「効きますよ、これホントに」
しかめる気持ちが、とても良く分かって――桃は、つい笑ってしまった。
しかめた視線が、自分にすっとんできたので、慌てて桃は薬を飲むための水の準備に取り掛かったのだ。
さすがに、太陽妃直伝の薬を、ホックスも拒むことは出来なかったようで。
桃の差し出す水と共に、一気に薬を飲み干したのだった。
この後、何が起きるか桃は知っている。
にこにこしながら待っていると。
疲労していたホックスは、ことりと眠りに落ちたのだ。
このまま、少し長めにぐっすり眠るだろう。
桃も、いつもこうだった。
「道場の朝稽古に、遅れる薬だな」
リリューは、瞳に笑みを浮かべる。
彼もまた、その薬のお世話になった人間なのだ。
「そっか…みんなお母さんは日本人なんだっけ」
分かっては、いたことなのだ。
だが、いまもなお、ちゃんとつながっている事実が、不思議であり、嬉しかった。
「そう…不思議な三人の女性は、父の旅路に舞い降りたんだよ」
美しい物語を繰るように――ハレは目を細めた。
「母は、本当に植物が好きでね」
桃が、ホックスを休ませていると、ハレが自分の荷を解いた。
ハレの母――太陽妃でもあり、桃の母の数少ない同胞。
「よく、母と一緒に宮殿の温室へ行ったよ」
荷の中から、紙の包みを取り出す。
それを、ハレはつらそうなホックスに差し出すのだ。
「体力が落ちているせいで熱が出たのだろう…母直伝の薬草だ」
あ。
包みが開かれた時、知っている匂いがした。
熱を出した時、母が自分に飲ませる薬だったのだ。
独特の匂いなので、決して間違えない。
そっか。
太陽妃の薬に、桃もお世話になっていたのだ。
匂いに、ホックスは顔をしかめる。
「効きますよ、これホントに」
しかめる気持ちが、とても良く分かって――桃は、つい笑ってしまった。
しかめた視線が、自分にすっとんできたので、慌てて桃は薬を飲むための水の準備に取り掛かったのだ。
さすがに、太陽妃直伝の薬を、ホックスも拒むことは出来なかったようで。
桃の差し出す水と共に、一気に薬を飲み干したのだった。
この後、何が起きるか桃は知っている。
にこにこしながら待っていると。
疲労していたホックスは、ことりと眠りに落ちたのだ。
このまま、少し長めにぐっすり眠るだろう。
桃も、いつもこうだった。
「道場の朝稽古に、遅れる薬だな」
リリューは、瞳に笑みを浮かべる。
彼もまた、その薬のお世話になった人間なのだ。
「そっか…みんなお母さんは日本人なんだっけ」
分かっては、いたことなのだ。
だが、いまもなお、ちゃんとつながっている事実が、不思議であり、嬉しかった。
「そう…不思議な三人の女性は、父の旅路に舞い降りたんだよ」
美しい物語を繰るように――ハレは目を細めた。