アリスズc
それぞれのエピローグ
∞
エンチェルクが去った後、桃の周りではいろいろなことがあった。
そのひとつが、イーザスの再来だ。
監視の厳しい都に、まだいるのかと驚いたが──考えてみれば、彼が彼女を置いて去るはずなどない。
テテラの歩く練習を兼ねた散歩には、いままで誰かが付き添っていた。
その付き添いの地位に、滑り込んできたのだ。
最初は、桃も心配して一緒に行っていて。
桃が来ると、コーも来る。
それに更に、手が空いている時はエインが来るのだ。
五人で散歩という、仰々しいことになっていた。
イーザスは、相変わらずギスギスした男だったが、前ほど桃を毛嫌いしていないように思える。
ただ、彼女にしてみれば、イーザスを見ると芋づる式に思い出す男がいて、心に引っかかるところはあった。
そんなある日、テテラは言った。
「明日から、イーザスと二人で散歩に行きます」
いままで彼女は、イーザスを避けていたところがあった。
自分の育てた可愛い子という部分以外は、触れてはいけないものだと思っていたのだろうか。
二人の関係が、散歩の間に変わっていくのが、桃にも見えた。
いや。
その、もう少し前。
ユッカスが捕らえられた事により自由になった彼が、テテラとの最初の再会の時、人目も気にせずに泣き崩れたのを、いまでも忘れない。
彼女の、木で作られた足をなでさすりながら、激しく嗚咽を繰り返しながら、魂の底から泣いたのだ。
あれは、懺悔と歓喜の入り混じる、筆舌しがたい号泣だった。
きっとイーザスは、テテラを失えば、狂ってしまうだろう。
それほどに、激しい愛がそこにあったのだ。
少しだけ、イーザスがうらやましいと思った。
そして同時に。
そう遠くなく。
テテラは、出て行くのではないかと感じたのだった。
エンチェルクが去った後、桃の周りではいろいろなことがあった。
そのひとつが、イーザスの再来だ。
監視の厳しい都に、まだいるのかと驚いたが──考えてみれば、彼が彼女を置いて去るはずなどない。
テテラの歩く練習を兼ねた散歩には、いままで誰かが付き添っていた。
その付き添いの地位に、滑り込んできたのだ。
最初は、桃も心配して一緒に行っていて。
桃が来ると、コーも来る。
それに更に、手が空いている時はエインが来るのだ。
五人で散歩という、仰々しいことになっていた。
イーザスは、相変わらずギスギスした男だったが、前ほど桃を毛嫌いしていないように思える。
ただ、彼女にしてみれば、イーザスを見ると芋づる式に思い出す男がいて、心に引っかかるところはあった。
そんなある日、テテラは言った。
「明日から、イーザスと二人で散歩に行きます」
いままで彼女は、イーザスを避けていたところがあった。
自分の育てた可愛い子という部分以外は、触れてはいけないものだと思っていたのだろうか。
二人の関係が、散歩の間に変わっていくのが、桃にも見えた。
いや。
その、もう少し前。
ユッカスが捕らえられた事により自由になった彼が、テテラとの最初の再会の時、人目も気にせずに泣き崩れたのを、いまでも忘れない。
彼女の、木で作られた足をなでさすりながら、激しく嗚咽を繰り返しながら、魂の底から泣いたのだ。
あれは、懺悔と歓喜の入り混じる、筆舌しがたい号泣だった。
きっとイーザスは、テテラを失えば、狂ってしまうだろう。
それほどに、激しい愛がそこにあったのだ。
少しだけ、イーザスがうらやましいと思った。
そして同時に。
そう遠くなく。
テテラは、出て行くのではないかと感じたのだった。