アリスズc
#
数日の間、リリューたちはそこで野営を続けることになった。
少女は、まだ回復しておらず、歩くことが出来ないし、彼女の髪は目立ち過ぎて、街に長く逗留することは危険だと思われたのだ。
モモが背が高く、彼女が少し低いので錯覚しそうになるが、年の頃はほぼ同じくらいだろう。
月側の人間が探している少女とは、きっとこの子のこと。
今度、彼らと遭遇したならば、二重の意味で向こうは必死に襲いかかってくることだろう。
白い髪の少女を奪い返し、ハレを亡き者にするために。
甲斐甲斐しく、彼女を世話するモモ。
モモは一人っ子だったし、周囲の人間はみな彼女より年上だったのだ。
誰かの面倒をみられるということに、喜びを見出しているように思えた。
少女は目を開けてはいるが、まだ意識がはっきりしていないようで、ずっとぼんやりしている。
そんな彼女を間近に見ながら、モモは何か考え込んでいるようだ。
その目が。
きょろきょろっと周囲を見た。
誰も見てないわよね、という風に。
リリューは、さりげなく視線をそらさなければならなかった。
自分が見つめていることを、モモが望んでいないと分かったからだ。
すぅっと、息を吸う音。
そして。
モモは。
小さい声で。
夜明けの歌を歌い始めた。
ああ。
分かった。
モモは、トーの歌を聞かせることで、彼女を覚醒させたいと思ったのだ。
トーの歌。
それは、月の側の歌ということ。
彼女が、月の人間というのならば、その歌を知っていてもおかしくないだろう。
リリューは、歌の方に視線を投げた。
空気が、動いた気がしたのだ。
少女の目は、相変わらず虚空をさまよっている。
しかし。
その唇は──微かに動いていた。
数日の間、リリューたちはそこで野営を続けることになった。
少女は、まだ回復しておらず、歩くことが出来ないし、彼女の髪は目立ち過ぎて、街に長く逗留することは危険だと思われたのだ。
モモが背が高く、彼女が少し低いので錯覚しそうになるが、年の頃はほぼ同じくらいだろう。
月側の人間が探している少女とは、きっとこの子のこと。
今度、彼らと遭遇したならば、二重の意味で向こうは必死に襲いかかってくることだろう。
白い髪の少女を奪い返し、ハレを亡き者にするために。
甲斐甲斐しく、彼女を世話するモモ。
モモは一人っ子だったし、周囲の人間はみな彼女より年上だったのだ。
誰かの面倒をみられるということに、喜びを見出しているように思えた。
少女は目を開けてはいるが、まだ意識がはっきりしていないようで、ずっとぼんやりしている。
そんな彼女を間近に見ながら、モモは何か考え込んでいるようだ。
その目が。
きょろきょろっと周囲を見た。
誰も見てないわよね、という風に。
リリューは、さりげなく視線をそらさなければならなかった。
自分が見つめていることを、モモが望んでいないと分かったからだ。
すぅっと、息を吸う音。
そして。
モモは。
小さい声で。
夜明けの歌を歌い始めた。
ああ。
分かった。
モモは、トーの歌を聞かせることで、彼女を覚醒させたいと思ったのだ。
トーの歌。
それは、月の側の歌ということ。
彼女が、月の人間というのならば、その歌を知っていてもおかしくないだろう。
リリューは、歌の方に視線を投げた。
空気が、動いた気がしたのだ。
少女の目は、相変わらず虚空をさまよっている。
しかし。
その唇は──微かに動いていた。