アリスズc

「何…してるワケ?」

 林をかきわけて近づいてきた人間は、ハレを見るなり驚きと咎める唇で語りかけてきた。

「やぁ…オリフレアリックシズ」

 ハレは、少女に組み敷かれていた。

 そこを、親戚に見つかってしまったのだ。

 苦笑しながら、挨拶を投げるのが妥当だろう。

 もう、一週間を経過したのか。

 ついに、オリフレアの一行に追いつかれてしまったのである。

「よくここが分かったね」

 街道から離れているし、いまは昼間だ。

 彼女が休む場所を探すには、奇妙な時間だった。

「うちの先行していた護衛が、あなたたちを見つけたのよ」

 オリフレアが顎で指した先には、フードをかぶった人間がいた。

 顔はよく見えないが、黒褐色の肌を持つ結構な年の男であることは分かった。

 それよりも。

 気になるのは、その男の光だった。

 いや、男自身の光が良いとか悪いとかではなく。

 母からもらった太陽の目は──時として、残酷な真実さえ見せることがある。

 ああ、そうか。

 ハレは、分かった。

 彼が。

 オリフレアの父か。

 血が近いと、光の色も近い。

 父と母と祖父と叔母と双子の弟と。

 ハレは、幼少から血縁の光の種類を、いくつも見る機会があった。

 オリフレアとフードの男は、間違いなく近い血の血縁だ。

 だが。

 それを。

 彼女は、知らない。

 ただの護衛の男だと、思っているのだ。

 ハレに絡んでいた少女が、きょとんと顔を上げてオリフレアを見る。

「オリフレアリックシズ!」

 復唱される、彼女の名。

 おっと。

 ハレは、失言をしていた。

 この子の前で、オリフレアの名前を呼んでしまったのだ。

 少女は──彼女の形を知ろうと、飛びつこうとした。
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