アリスズc
∠
最初に動けなくなったのは──ビッテだった。
彼ら以外、誰も通っていない街道でのこと。
うっと、彼はうめくとその場に膝をついたのだ。
一瞬、テルは彼が体調不良でも起こしたかと思った。
だが。
その気配に気づいて、彼は飛びのいた。
「さがれ!」
他の二人にも叫ぶ。
ビッテは、先頭を歩いていた。
だから彼は、一番最初に『その中』に突っ込んでしまったのだ。
「カンのいいこと…」
脇の林の中から、女の声が聞こえる。
テルは、必死に頭の中で考えを巡らせた。
記憶にある人間と、次々と照合しようとしたのだ。
だが── 一致しなかった。
「ひとつ聞く」
テルは、向こうの思惑のペースに乗る気などない。
彼は、暴かなければならなかった。
そこにいる女が、一体誰なのか。
何故ならば。
「あなたは…イデアメリトスか?」
何故ならば、ビッテを落としたものは──魔法だったからだ。
魔法は、イデアメリトスの専売特許。
ただし。
成人の儀を成功させたものしか、自由に使ってはならない。
現在、旅を続けている者を除けば、父と祖父以外許されないのだ。
「そうよ…私はイデアメリトス」
木の幹の向こう側。
植物とは違う光が混じっている。
そこに、『それ』はいるのだ。
名乗った。
イデアメリトスと、名乗った。
テルは、なおさら視線に力を込める。
魔法を使ってはならない者が──そこにいるのだ。
最初に動けなくなったのは──ビッテだった。
彼ら以外、誰も通っていない街道でのこと。
うっと、彼はうめくとその場に膝をついたのだ。
一瞬、テルは彼が体調不良でも起こしたかと思った。
だが。
その気配に気づいて、彼は飛びのいた。
「さがれ!」
他の二人にも叫ぶ。
ビッテは、先頭を歩いていた。
だから彼は、一番最初に『その中』に突っ込んでしまったのだ。
「カンのいいこと…」
脇の林の中から、女の声が聞こえる。
テルは、必死に頭の中で考えを巡らせた。
記憶にある人間と、次々と照合しようとしたのだ。
だが── 一致しなかった。
「ひとつ聞く」
テルは、向こうの思惑のペースに乗る気などない。
彼は、暴かなければならなかった。
そこにいる女が、一体誰なのか。
何故ならば。
「あなたは…イデアメリトスか?」
何故ならば、ビッテを落としたものは──魔法だったからだ。
魔法は、イデアメリトスの専売特許。
ただし。
成人の儀を成功させたものしか、自由に使ってはならない。
現在、旅を続けている者を除けば、父と祖父以外許されないのだ。
「そうよ…私はイデアメリトス」
木の幹の向こう側。
植物とは違う光が混じっている。
そこに、『それ』はいるのだ。
名乗った。
イデアメリトスと、名乗った。
テルは、なおさら視線に力を込める。
魔法を使ってはならない者が──そこにいるのだ。