アリスズc
∠
女は、驚きの余りテルを見つめたまま、一瞬動きが止まった。
最初の雷に、打たれたと思っていたに違いない。
だが、彼女はそれを信用しきってはいなかった。
確実に止めをさすために、水を撃ったのだ。
だが、女は知らないのだ。
テルは、これまでのイデアメリトスの子とは違う。
己の身は、己で守ることの出来る、イデアメリトスの子なのだ。
その呆然とした隙に。
エンチェルクが、飛び込んできた。
彼女の刀が突っ込むのと、驚いた女が左の手を突き出すのは──女の方が早かった。
ぞっとした。
間に合わない。
魔法の発動の方が、速い。
テルは、髪を巻いた手を突き出そうとした。
それとて、到底間に合わない。
分かってはいたのだ。
分かってはいるが、何もせずに見ていることが出来なかった。
「エンチェルク!」
女の手が、真っ赤に燃える。
焼き殺す気だ。
テルが、遅れて右手の魔法を発動しようとした時。
とすっ。
そんな、音がした。
「お…当たるもんだな」
エンチェルクと女が対峙する反対側。
少し離れたところに──ヤイクがいた。
女の背に突き立つ、彼の短剣。
「ぎゃあああああああ!!!!!」
激痛で振り回される炎に、エンチェルクは飛びのいた。
あぁ。
そうだ。
ヤイクは、政治肌ではないか。
敵も──味方も騙すのはお手の物だ。
女は、驚きの余りテルを見つめたまま、一瞬動きが止まった。
最初の雷に、打たれたと思っていたに違いない。
だが、彼女はそれを信用しきってはいなかった。
確実に止めをさすために、水を撃ったのだ。
だが、女は知らないのだ。
テルは、これまでのイデアメリトスの子とは違う。
己の身は、己で守ることの出来る、イデアメリトスの子なのだ。
その呆然とした隙に。
エンチェルクが、飛び込んできた。
彼女の刀が突っ込むのと、驚いた女が左の手を突き出すのは──女の方が早かった。
ぞっとした。
間に合わない。
魔法の発動の方が、速い。
テルは、髪を巻いた手を突き出そうとした。
それとて、到底間に合わない。
分かってはいたのだ。
分かってはいるが、何もせずに見ていることが出来なかった。
「エンチェルク!」
女の手が、真っ赤に燃える。
焼き殺す気だ。
テルが、遅れて右手の魔法を発動しようとした時。
とすっ。
そんな、音がした。
「お…当たるもんだな」
エンチェルクと女が対峙する反対側。
少し離れたところに──ヤイクがいた。
女の背に突き立つ、彼の短剣。
「ぎゃあああああああ!!!!!」
激痛で振り回される炎に、エンチェルクは飛びのいた。
あぁ。
そうだ。
ヤイクは、政治肌ではないか。
敵も──味方も騙すのはお手の物だ。