アリスズc
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エンチェルクは、ヤイクに引っ張り出された。
本来、保存食などの買い出しは、彼女の仕事だ。
逆に言えば、ヤイクが来る必要はない。
だが、彼はこれまでも必ず買い出しには、自発的に動いていた。
こうして歩き、品物を見、人の話を聞き、相場を知り──己の血肉にしているのだ。
子供の頃のヤイクは、町で仕事をするのを嫌がっていた。
貴族の息子として、許せないものがあったのだろう。
だが、そんな彼を。
ウメが変えた。
その延長線上に、あの時の彼がいるのだろうか。
あの時。
そう。
イデアメリトスの傍系の女性との戦いの時。
エンチェルクは、まったく彼のことなどあてにしていなかった。
しかし、彼がいなければ、いまごろエンチェルクは無事では済まなかっただろう。
ヤイクは。
己の損得しか考えていない男だ。
結果的にこそ、自分を救う結果にはなったが、それを目的に動いたわけではない。
そんなことは、エンチェルクにだって分かっている。
だが、彼がただの貴族の口だけ坊ちゃんだったら。
エンチェルクは、いまこうして立っていないのだ。
ウメが。
間接的に、彼女が自分を救ってくれたのか。
そう、エンチェルクには思えた。
それならば。
そうだというのならば。
自分は、この男に言えるのではないか。
この男の向こう側にいるウメに。
感謝の──言葉を。
エンチェルクは、ヤイクに引っ張り出された。
本来、保存食などの買い出しは、彼女の仕事だ。
逆に言えば、ヤイクが来る必要はない。
だが、彼はこれまでも必ず買い出しには、自発的に動いていた。
こうして歩き、品物を見、人の話を聞き、相場を知り──己の血肉にしているのだ。
子供の頃のヤイクは、町で仕事をするのを嫌がっていた。
貴族の息子として、許せないものがあったのだろう。
だが、そんな彼を。
ウメが変えた。
その延長線上に、あの時の彼がいるのだろうか。
あの時。
そう。
イデアメリトスの傍系の女性との戦いの時。
エンチェルクは、まったく彼のことなどあてにしていなかった。
しかし、彼がいなければ、いまごろエンチェルクは無事では済まなかっただろう。
ヤイクは。
己の損得しか考えていない男だ。
結果的にこそ、自分を救う結果にはなったが、それを目的に動いたわけではない。
そんなことは、エンチェルクにだって分かっている。
だが、彼がただの貴族の口だけ坊ちゃんだったら。
エンチェルクは、いまこうして立っていないのだ。
ウメが。
間接的に、彼女が自分を救ってくれたのか。
そう、エンチェルクには思えた。
それならば。
そうだというのならば。
自分は、この男に言えるのではないか。
この男の向こう側にいるウメに。
感謝の──言葉を。