アリスズc

 オリフレアが、先を行った翌日。

「そろそろ…出発しようか」

 ハレは、そう言ってみなを見回した。

 都を出た時から、一人増えた。

 コーだ。

 彼女が、女性でよかった。

 もし男であったならば、共に行くことも出来なかっただろう。

 そう考えて、ハレは微笑んだ。

 父も、そうだったのだろうか、と。

 異国より舞い降りた、三人の女性。

 彼女らが女性でよかったと、父も思ったのだろうか。

「出発?」

 コーが、首を傾げながら復唱する。

 彼女は、大分言葉を覚えては来たが、それよりもまだ世界中の言語の量の方が遥かに勝っていて。

 まだまだ、分からない言葉も沢山ある。

 だが、それはこれからの旅路で埋めていけるだろう。

 とりいそぎは。

「モモ…コーの頭に布を巻いてもらえるか?」

 それだった。

 彼女の頭を、日の下にさらして歩くには、目立ちすぎた。

 少しくらい、隠した方がいいのかもしれない。

「はい…」

 モモが荷物を漁りながらも、ちらちらと自分を見る。

「どうかしたかい?」

 その視線が気になって問いかけると。

 モモは、あーうーとしばし困ったように唸った後。

 こう言った。

「あの…コーの頭を隠しても…殿下の頭が見えていたら…余り意味がないかなーって」

 月の人は、どっちも狙ってるわけですし。

「………」

 一瞬。

 一同に沈黙が走った。

 ハレは──ふっと吹いた。

 なるほど、そうだ、と。

「分かった…コーもそのままでいい。綺麗な白い髪を、隠さなくていいよ」

 ハレが笑うと。

「髪、綺麗?」

 コーが、自分の半端な長さの髪を引っ張って。

 にこーっと笑った。
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