アリスズc

 桃は、コーの髪を油をつけて二つに編んだ。

 彼女の髪は、とてもトーと似ていて。

 風をはらんで、大きく広がる傾向があったのだ。

 母は、そんなトーのことを『獅子』と呼んでいた。

 母の知る生き物の中に、彼の髪のようなたてがみを持つものがいるという。

 堂々としていて強い獣。

 彼のたてがみは、桃も好きだった。

 けれども、コーは女の子で。

 そして、これからこの国の人たちの多くと、出会うことになるのだ。

 綺麗に整えて、みんなに愛される女性になって欲しかった。

 編みあげて鏡を見せると。

 驚いて、桃を見つめる。

「桃…」

 コーは嬉しそうだった。

 何か言いたそうなのだが、その言葉をまだ彼女は知らないようだ。

「うん、コー。きらきらしてるよ、髪」

 油のおかげで艶が出て、白い髪は銀の光を美しく反射する。

 目が。

 その目が、まさにきらきらと輝いた。

「髪…きらきら」

 その目が、はっと周囲に巡らされる。

「桃の髪…きらきら。ハレイルーシュリクスの髪…きらきら」

 そこで、コーの言葉が止まった。

 ホックスは貴族の子息なので、確かに長く伸ばしてはいるが、さして気にしていないのか手入れをしている様子はない。

 リリューもまた、あるがままの髪だったのだ。

「ホックスタンディーセム…きらきら…する?」

 コーが、そう覗き込んだ時の──彼の顔を来たら。

 ぎょっとした後、どう視線を逃したらいいのか分からずに、目を上へ下へと動かすのだ。

 ホックスがコーの餌食になっている間。

 さりげなくリリューが。

 五歩遠ざかったのを。

 桃は、見た。
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