短編集

  直してやるよりも
  新しいものを贈ろうか
  そうだ、そうしよう



 忘れた、また今度。忘れた、また今度。
 あなたはそう言う度に、わたしの目を見なくなった。気付いたのは、いつごろだったろうか。いつから、気付かない振りをしているのだろうか。

「また今度」
 と、また口にしたから、わたしはもう頷かなかった。
「自分で買うからいらないよ」
「そう言うな。そうだ、今から買って来る」
 そしてあなたは、夜の町に溶けていった。町に行かなくても、欲しい物を手に入れられるこの時代に。
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