短編集

 しばらくページを捲り続け、ようやく目的の写真を見つける。その近辺に書かれていることを読む。そこに書かれていたことを要約してまとめ、新たな疑問を解決するために別の文献を探す。それを繰り返し、自筆のものを見返し、一体どういうことかと考える。考えれば考えるほど不可解。私は大きく伸びをして、何とはなしに外を見た。月が見える。もうこんな時刻か。と、腕時計に目を落とした時、視界の端にもう一つの黄色い大きな天体を捉えた。顔を上げ、二つの月を見比べる。一つは本当の月、もう一つはガラスに映っただけ。
 はっとして、もう一度自筆のメモを見た。これが、こうなって、こうなる。こうだったら、こうだったら。私は更に仮定を重ね、仮定という虚構に私なりの結論を見出す。つまり。
 全部、嘘だったのだ。NISHI2-407の仕組みのもっともらしい説明も、そもそもNISHI2-407という装置さえ。
 私は図書館の四階へ駆け上がる。そこは飲食のできるスペースで、大きなガラス戸を開けると簡単に屋上に出られる。となりの校舎から見えない位置まで行き、携帯電話を開いた。ここは図書館の屋上。出発点はlibrary-rと入力する。到着点は――どこでも良い。この時間なら、どこでも先輩に会える。到着点は、nishi2-407。

 ぐらりと揺れるのは本当に一瞬だ。でも私は、その一瞬の間にたくさんのことを考えた。それを全部、先輩に聞いてやろうと思った。
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