短編集
 いつしか、彼はわたしの最大の味方になっていた。

 わたしが目標に向かって進むとき、彼の存在がわたしの救いだった。苦しくても、彼がいれば乗り越えられた。

 
 16歳になったころ、違和感があった。
 彼のことがわからない。そう感じることが増えた。
 彼がわたしを見てくれない。先に先に進んでしまう。

 わたしは焦った。
 焦ってわたしも、彼の背中を見て進むのだけれど、彼はまるで羽を得たかのように、軽やかに、速やかに進む。高みを目指すように。

 彼について行こうとした。彼のそばにいたかった。そのために、泣いて夜を過ごしたこともある。

 でも、わかっていた。
 結局、わたしの努力が足らなかったのだと。 
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