短編集
私は自分の頬が赤くなったのがわかった。
イシカワ先輩、嫌いじゃない。どちらかと言うと、多分、好き。

「でも先輩、彼女いるらしいよね」
「あ、この前見たよ」


私の淡い恋は、友人二人の他愛ない言葉に打ち砕かれる。



***

先週サオリからイシカワ先輩のことを聞いた時、その時は嬉しかったけど、よくよく考えたら、それもまた噂。揺さぶられてるだけ。

どうなの? という質問には、注意します、とおどけてはぐらかす。

「ヒロ、最近綺麗になったよね」
ショーコが文庫本を読みながらぽつんと言う。
「何? 恋? イシカワ先輩?」
「ちがっ……何で、ショーコ笑うの!?」
「あ、ショーコ狙って言ったでしょ」
サオリの言葉に、ショーコはコーヒーを口にしながら私を見て目を細めた。




***

部屋で一人、天井を見つめている。イシカワ先輩、嫌いじゃない。どちらかと言うと、多分、今でも好き。

でも。

私はわからない。
結局、好きってどういう気持ちなのか。
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