短編集
「さっちゃん、けーこね、おおきくなったら、たかちゃんのおよめさんになるの」
 そう言っていたのはいつのことだろう。まだ私を「さっちゃん」と呼んでいたから、私たちが本当に小さかった頃だ。あの、妙に恥じらった、でも天真爛漫の笑顔が思い出される。

「ねえ紗和、いとこ同士でも結婚できるんだって」
 それは、同じセーラー服を着た私たちが色んな知識を得た頃。憬子は真っ直ぐな眼差しで、私にそう言った。
「やったじゃん、貴ちゃんと結婚できるね」
 私は話を合わせるための笑顔で返事をする。憬子のお父さんと貴ちゃんのお母さんは、同じお父さんとお母さんから生まれた。

< 58 / 115 >

この作品をシェア

pagetop