短編集
落ち着かなきゃ、と頭の隅で思っている。ハタチ過ぎて、幼なじみと言えども男の人の前でこんなに泣いて、無様だ。けれど、しゃくり上げてくるものはなかなか収まらず、貴ちゃんは背中をさすってくれていた。
「ごめんね、貴ちゃん」
「気にすんな」
さっき貴ちゃんは「お前だって心を傷めている」と言った。その前に「傷心を慰める」と言った。そう、貴ちゃんの方がずっと辛い筈なんだ。二人は従兄妹だけど、恋人同士なんだから。
「ごめんね、貴ちゃん」
「気にすんな」
さっき貴ちゃんは「お前だって心を傷めている」と言った。その前に「傷心を慰める」と言った。そう、貴ちゃんの方がずっと辛い筈なんだ。二人は従兄妹だけど、恋人同士なんだから。