短編集
「今はただ、幼なじみ兼いとこ、だった。紗和が東京に行ってからのことだから、聞いてなかったか?」
 全く知らなかった。憬子も何も言わなかったし、友だちもそんなことを言っていなかった。
「憬子が口止めしてたんだな。あいつ、昔っから俺のこと大好きだったからな」
 懐かしそうに言う。
「それに、ちょっとプライド高いしさ」
 笑い声を混ぜた。苦しい笑い声だ。
「どうして、別れちゃったの? ……私、二人の結婚式に行くのを楽しみにしてたんだよ」

< 63 / 115 >

この作品をシェア

pagetop