短編集
 それから何日か、私は実家にとどまった。東京に戻る前日、私は母に、考えていたことを打ち明けた。

「お母さん、私、もう家に戻ってこないかも」
 努めて明るく言う。母は目を丸くしていた。
「何言ってんの」
「今、向こうでね、付き合ってる人がいて……」
 一つ年上で、今度の春に卒業する。就職先は決まっていて、卒業したら一緒に住もう、と言ってくれた。

「結婚相手?」
「このままなら……うん、するかも」
 同棲の先は話したことがない。彼もまだ、言えないでいるんだ。でも、そうなると良い。

「……早めに紹介しなさいよ?」
「うん」

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