ナンセンス!

4

やがて、フルスモークの一台の車が、公園入り口にやって来た。
型落ちのクラウンだ。 メーカーロゴや車名プレートが金メッキで、何か、アブナイ雰囲気のする車である。 ローダウンした車体のリヤガラスには、YAZAWAの白い文字プリントがデカデカと貼ってあり、ブッ太い幅広タイヤに、キンキラキンのハデなホイールをはめている。
運転席から、武蔵野の制服を着た男が、下りて来て言った。
「 ありゃ? もう、一騒動あったんですか? 」
龍二が答える。
「 おう、サブ。 今、ウオーミングアップが終わったトコだ。 姉御、どうぞ・・・ 」
龍二が後部座席のドアを開け、僕に乗るよう、勧めた。
真っ赤な地のシートに、紫のクッション。
・・・いい趣味だ。
まさに未知の世界。 意味も無く、ドキドキするわ。
マサが、サブに言った。
「 オレたちは、ち~と、浜二に行って来る。 連中の、真意を確かめにな。 姉御を頼むぞ? 」
「 分かりました。 きっちり、学校へ送らせてもらいます。 会議は予定通り、放課後からでいいですか? 」
「 おう。 幹部は、必ず出席するように伝えておけ。 いいな? 」
「 分かりました 」
サブと言う男がドアを閉め、運転席に乗り込んで来た。
僕は、動き出した車の外に立っているマサと龍二を見た。 二人とも、最敬礼でお辞儀をして、僕が乗った車を見送っている。 任侠だ・・・ 仁義無き戦いのようだ・・・! ホントに、あの二人は高校生か?

「 姉御・・ いや、会頭をお乗せ出来るなんて、光栄っス! 」
車を走らせながら、サブは、嬉しそうに言った。
「 この車は、お前のか? 」
星野がいつも、どんな口調で喋るのか分からなかったので、少々、トーンを落として
喋ってみた。 多分、こんなんだろう・・・
サブは答える。
「 いやあ、兄貴のっスよ! 自分は、まだ、17っスから、はっはっは! 」
・・・てめえ、無免じゃねえか。
高らかに、笑ってんじゃねえよ・・・!

僕を乗せた怪しげなクラウンは、軽やかにセンターラインを踏みながら、朝の街を
疾走して行った。
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