ナンセンス!
お説教

1

僕を呼び止めたのは、30代前半と思える女性だった。
僕の記憶には無い。
女性は、掴んでいた僕の襟を放すと言った。
「 何てコトしてるのよ、あなたはっ! 」
・・・え~と、・・・はい?
やや茶髪で、緩やかなウエーブを掛けたロングの髪に、薄いベージュのスーツ。 黒いストッキングに、ヒールの靴を履いている。 最初、30代かと思ったが、もう少し若そうだ。 でも、誰なのかは、分からない。 向こうは、健一を知っているようだ・・・
「 ・・あ・・ あの~・・・ 」
僕が、口もごらせていると、彼女は、言った。
「 パチンコくらい、仕方ないとしても・・・ インチキは、ダメよ! 立派な犯罪よ? 分かってるのっ? 」
「 すみません 」
くそう・・! 何で、僕が、謝らにゃならんのだ・・・!
それもしても一体、この人は誰だ?
「 あたしのマンション、この近くにあるんだけど・・・ 学校から帰って来る途中、あのパチンコ屋の前を通り掛かったら、あなたが追い掛けられて行くんだもの・・・! びっくりしちゃったわ! 先生も、あなたがパチンコ通いしいてるのは、生活指導の先生から聞いてたケド、こんなコトしてるんなら、もう止めなさい! 」
どうやら、健一の学校の先生らしい。
僕は言った。
「 すみません、先生・・・ つい、魔が差して・・・ 」
「 あなたは、いつも間が差してるじゃない 」
・・・良くご存知で。
「 そのうち、痛い目に遭うわよ? それからじゃ、遅いの 」
・・・全くです。 何とか、したって下さいよ、ホント。
「 あなたとは、いつか、じっくり話したいと思ってたの。 先生のマンション、すぐソコだから、来なさい! 」
あの~・・・ 僕、かすみが心配なんですけど・・・?
< 146 / 187 >

この作品をシェア

pagetop