ナンセンス!
美津子先生は、続けた。
「 まあ、あと一年あるんだから、その気になって勉強すれば、何とかなるかもね。 でも、かなりの努力が必要よ? 出来る? 健一クン 」
ムリだと思います。
美容師の学校行って、家業を継がせる方が得策だと思うのですが? 大体、卒業出来るかどうか、分かったモンじゃないですわ・・・
僕は答えた。
「 とりあえず、努力しようと思います 」
努力する・・ じゃなくて、思います、にしておいた方が良いだろう。 あとで、体が元に戻った時の事を視野に入れておいた方が賢明だ。 ヤツの辞書には、努力という文字は無い。 ついでに、我慢、という文字も無い。 オマケだが、理性も無い。
美津子先生は、嬉しそうに言った。
「 OK! 今日のコトは、黙っててあげる。 でも、今度したら、先生にも考えがあるわよ。 いいわね? 」
「 はい。 すみませんでした 」
頭を下げる、僕。
少し、キツそうだが、いい先生じゃないか。 こんな、親身になって心配してくれる先生は、そうはいないぞ、健一。
ムリに成績を上げろ、とは言わん。 せめて、この美津子先生に心配を掛けんなよ。 見たところ、まだ独身らしい。 お前のような、アホ生徒の相手をしているうちに、婚期を逃しそうになってるんじゃないのか? ヒトの人生、狂わすなよな・・・!
「 ちょっと、トイレね・・・ 」
美津子先生は、そういって立ち上がり、玄関脇のトイレに入って行った。
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