ナンセンス!
込み合った店内。
その一角が、特に込み合っている。 黒集りの山だ。 誰か、有名人でも来てるのか?
通りすがり、僕は、その中心をのぞき込んだ。

・・・かすみだった。

傍らには、幾つものドル箱がうず高く積まれ、その脇には、あの仙道時の連中が満面の笑みで立っている。 一人は、ボーイのように、腕におしぼりを掛け、もう一人は、○っちゃんりんごを載せたトレイを持って立っていた。
その中心で、有名私立女子高、多岐学園の制服を着たかすみが、打っている。 行儀良く、足をぴったり揃えて座りながら・・・・
異様な光景だ。
取り巻きのヤジ馬たちは、興味津々の様子である。
「 また、掛かったぞ! あの子 」
「 信じられん・・・! プロか? 」
違います。 今日、生まれて初めて打った、茶目っ気満載の高校生です。
僕は、人垣をかき分けてかすみに近付き、声を掛けた。
「 かすみ・・! 」
仙道寺の連中が、僕の腕を掴んで言った。
「 ちょい待ちな、姉さん・・・! 総長に、用事かい? 誰だ、あんた 」
僕は、構わず続けた。
「 かすみ! みちるだ。 待たせたな、帰ろうか 」
○っちゃんりんごを持っていたヤツが、警戒した目つきで言う。
「 気安く、総長に声を掛けんじゃねえよ! オレらを通さんかい、おお? 」
振り向いたかすみは、僕を見て、一瞬、戸惑ったようだが、すぐに理解し、言った。
「 みちる! 見てこれ! 何だか知らないけど、いっぱい出て来ちゃったの! 」
・・・出し過ぎだよ、かすみ。 多分、10万以上あるよ? どうすんのさ、コレ・・・!
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