紅朧
紅朧
紅朧、という猫がいた。
艶やかな黒毛。闇の中で光る真黒の瞳。首には紅い唐紐。
飼い猫である。
主は藤和仁央。涼やかな目元は、どこか寂しげな気を纏いつつも、常に人を魅了する。平安の都の一角に落ち着いた屋敷を構え、その中に紅朧はいる。
「くろう」と主が呼べば
「みゃあ」猫は答える。
手のひらにのるほどに小さかった紅朧も、やがて、しっとりとした美しい猫になった。
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