鬼守の巫女

「逃げようなんて考えない方がいい。街の境は特に厳重に一族の手が回ってるからな。お前を逃がさない為なら、奴等は平気で一般市民も犠牲にする。どんな事件も揉み消される。……ここはそんな所だ」

彼は少し悲しそうに瞳を揺らし遥か遠くのビルを見つめ呟いた。

……隔絶された街。

彼の話が本当なら、今ここで走り出し彼を振りきれたとしても、街の外に逃げる事は出来そうにもない。

「……うん」

小さく頷いて答えると、彼はまた前を向いて歩き続ける。
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