鬼守の巫女
「稔は居るか?」
「……は、はい!今、お呼び致します!」
火伏さんが教室の入り口に居た男子生徒に声を掛けると、その男子生徒は少し緊張した様に返事をして、急ぎ足で教室の中へと入って行った。
そっと教室の中を覗き込むと、窓際の一番後ろの席の男の元へ、さっきの男子生徒が耳打ちをしている姿が見えた。
その次の瞬間、席に座っていた男と目が合う。
すると彼はニッコリと眩しい笑みを浮かべ、立ちあがった。
それから静かにこちらに向かって歩いて来ると、穏やかな笑みを浮かべて首を傾げて見せた。