鬼守の巫女
「……ん?どうかしたのか?」
そう言って彼は少し心配そうに私を見つめる。
「……本当に……いいの?」
再度同じ質問を投げかけると、彼は困った様に笑ってそれから少し真剣な顔をした。
「七宮は一族にとって裏切り者だ。でもお前にとっては……本当の父親だろ?」
彼はそう言うと、ポンポンと私の頭を撫でた。
「お前の気持ち……少しだけ……分かる気がするんだ」
そう悲しそうに彼は呟くと、また背を向け歩き出した。
その背中を見つめたまま、思った。
突然と現れたこの残酷で異常な現実を受け止めきれない今、彼のその優しさだけは……何となく本物の様な気がする……と。