鬼守の巫女

「土室さん!!」

私のその叫びに彼は答えない。

不安そうに瞳を揺らす私を見て、鬼の男はニヤリと残酷な笑みを浮かべた。

そしてゆっくりと鬼の視線が……遠くで異形の者と戦っている火伏さんに向けられる。

男はそのまま火伏さんに向かって凄い速さで走ると、次の瞬間彼に向かって蹴りを入れた。

それに何とか反応した火伏さんは刀でそれを受け止めるが、勢いで吹っ飛ばされる。

火伏さんは空中で上手く体制を整えると、男に向かって刀を振り下ろした。

しかしそれは容易く避けられ、空気が切り裂かれる音が聞こえただけだった。
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