鬼守の巫女

「ふざ……けん…な……巫女は……渡さ……ない」

急に聞こえた声に視線を移すと、火伏さんは腹部を押さえたままフラフラと立ち上がる。

「……呼べ」

「……え?」

「俺の真名を呼べ!!」

彼は声を振り絞りそう叫ぶと、真っ直ぐに私を見つめた。

「……ま……な?」

その単語に酷く心がざわめいた。

……知っている。

……私は知っている。

ギュッと拳を握り締め、目を閉じると……頭の中に何かが浮かんで来るような気がした。

……まな。

……真名。

……本当の名前。

……知っている。

……私は知っている。

深い闇の中、突然浮かんだその《名》にそっと目を開く。
< 183 / 912 >

この作品をシェア

pagetop