鬼守の巫女
「ふざ……けん…な……巫女は……渡さ……ない」
急に聞こえた声に視線を移すと、火伏さんは腹部を押さえたままフラフラと立ち上がる。
「……呼べ」
「……え?」
「俺の真名を呼べ!!」
彼は声を振り絞りそう叫ぶと、真っ直ぐに私を見つめた。
「……ま……な?」
その単語に酷く心がざわめいた。
……知っている。
……私は知っている。
ギュッと拳を握り締め、目を閉じると……頭の中に何かが浮かんで来るような気がした。
……まな。
……真名。
……本当の名前。
……知っている。
……私は知っている。
深い闇の中、突然浮かんだその《名》にそっと目を開く。