鬼守の巫女
「一緒に来て」
「……え?」
「いいから」
少女はそれだけ言うと、コツコツとヒールの音を響かせて部屋から出て行ってしまった。
扉が開かれたままの入り口から、少女の遠くなっていく背中を見つめたまま、困った様に手の平の上の猫を見る。
「にゃ」
猫はそう小さく鳴くと、長い円柱形の腕で出口をツンツンと差して見せる。
「付いて行けって事?」
その問いに猫はコクコクと頷くと、ピョンと私の肩に飛んだ。
そして早く行けとばかりに、必死に出口を差し続ける。
「……分かったよ」
そう呟き、フラフラと立ち上がると……一抹の不安を抱えたまま、薄暗い廊下にそっと足を踏み入れた。