鬼守の巫女
第十八章 甘い吐息
ベッドの上にうつ伏せたまま、そっと窓から空を見上げた。
薄暗い空からはザァザァと雨が降り注ぎ、窓ガラスを叩いている。
鬼の男と話した後、そのまま部屋へと戻った。
鬼の告げた真実。
……果たしてそれは本当なのだろうか。
鬼が人間を襲わなくて済むのなら、結界はいらない。
結界が無ければ、巫女もいらない。
結界を守る為に生きる皇の人達は……皆、自由になれるのではないか。
……私や父も含めて。
そんな都合のいい考えだけが、頭の中を廻り続けた。
……私だって死にたくない。
巫女とか、鬼とか、結界とか……本当はどうでもいい。
私は元に戻りたい。
父と過ごしていた……あの穏やかな日々に。