鬼守の巫女
「俺の望みは結界を壊す事だ。凪……お前の望みは?」
「私は……お父さんを救い出したい」
「父親を?お前の父、前朧源はすでに死んでいるだろう?」
そう言って男は不思議そうに首を傾げる。
「私を一族から浚って隠した人。その人を父と信じ、今まで一緒に暮らしてきた。もちろん今でも父親は彼しかいないと思ってる」
「……そうか。その男が捕まっていると」
「そう。だから私はお父さんを助けたい。貴方には悪いけど、一族とか鬼とか結界とか……どうでもいいの。私はお父さんを助けたい。また前の生活に戻りたいだけ」
そう言って真っ直ぐに鬼を見つめると、鬼は小さく頷いて笑った。