鬼守の巫女
第二十五章 炎の代償
「おかえり」
目の前の男は微かに笑みを湛えたまま、静かに私を見つめた。
灰色の着物に身を包んだその男は、それからそっと私に手を伸ばす。
その手から逃れる事も、受け入れる事もしないまま、ただ真っ直ぐに彼を見つめた。
……総本家当主、朧源。
偽りの月の淡い光に照らされる彼の白い大きな手が、そっと私の頬に触れた。
「無事でよかった。すまなかったな。怖い思いをさせて」
彼はそう言うと見せた事も無い様な、優しい笑みを浮かべる。
しかしその笑みは酷く私の胸をざわめかせ、微かに体に力が入るのが自分でも分かった。