鬼守の巫女

「……朧源」

小さく男の名を呼ぶと、男は私の姿に気付いた様で、ほんの少し驚いた様に目を見開いた。

「こんな時間に何をしている」

「……別に。眠れないから散歩してただけ」

そう素っ気なく答えると、朧源は窺う様に私を見つめた。

「……そうか」

朧源はそれだけ言うとそっと空に向かって手を伸ばす。

すると彼の手に静かに鶴が舞い降り、それから鶴は動く事を止めた。

「……その鶴……貴方が折ったの?」

その問いに朧源は答えないまま、静かに空を見上げる。
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