鬼守の巫女

「……本物の月もこんな風に美しいものなのか?」

朧源のいきなりなその問いに、ポカンと口を開く。

「え?……いや……うん、多分」

アワアワしながら曖昧な返事を返すと、朧源は真っ直ぐに私を見つめ、それから少しだけ悲しそうに瞳を揺らした。

「私は外の世界を知らない。生まれてから一度も……地上に出た事が無いのでな」

「い、一度も?」

朧源の口にした真実に思わず声を漏らす。
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