鬼守の巫女

「樫月、日向の当主、それから朧源の証を持って生まれた者は、死ぬまでこの皇楼から出る事は出来ない」

「馨さんと彩乃さんも?」

私のその問いに彼は小さく頷いて答えると、少し自嘲気味に笑った。

「外の世界は素晴らしいものか?」

「……え?」

「私には分からない。この皇楼が私の全てだ。この狭い世界で生まれ、そして死ぬ。それが私の……朧源を継ぐ者の運命」

彼はそう言うと、空を見上げたまま静かに目を閉じる。

「……仕方のない事だ」

彼はまるで自分に言い聞かせる様に小さく呟くと、そのまま私に背を向け歩いて行ってしまう。
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