鬼守の巫女

「ここに居るよりも学校に居た方が気が紛れると思いますよ。今日は……色々とありますから」

木住野さんはそう言って私を振り返り、困った様に笑った。

……色々……と言うのは、多分火伏さんの事を言っているんだと思う。

「……火伏さん……どうなるの?」

私のその問いに彼は答えないまま、微かに瞳を揺らして俯いてしまった。

そのまま二人で歩き続け駐車場に出ると、そこに用意されていた車に乗った。

車は静かに走り出し、それから眩しい本物の太陽の下へと飛び出す。

車はオフィス街を走り抜け、大きな大通りに出るとそこを真っ直ぐに進んで行った。

車の窓から流れていく景色を茫然と眺めたまま、小さく息を吐く。

すると窓ガラスに反射して見える木住野さんが、同じ様に小さく息を吐いた。
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