鬼守の巫女

「七宮拓郎。お前は一族の総本家に仕える身でありながら、前火伏当主《火伏 烈》と共謀して先代巫女《遥》を拐かし、我々から巫女を奪った。その事実に……間違いないな?」

「……はい」

朧源のその問いに、父は真っ直ぐに前を見据えたまま小さく答える。

すると辺りにザワザワとざわめきが起こった。

《……全てはこの男のせいだ》

《遥様を唆し、巫女を奪う事など赦される事ではない》

《……朧源様も何を考えていたのやら。早く殺してしまえば良かったものを》

断続的に聞こえる誰かの囁きに、背筋に不快な汗が滲み出す。
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