鬼守の巫女
第三十五章 覚悟の香
男に腕を引かれたまま廊下を歩いて行くと、そこは初めてこの皇楼に来た時に見た、美しい絵の描かれた襖の前に辿り着いた。
「失礼します」
男がそう言って襖を開くと、そこには朧源が不敵な笑みを浮かべて立っていた。
そしてその横には馨さんと彩乃さんが神妙な顔をして立っている。
「……どうした?入れ」
朧源はそう言って首を傾げて見せる。
すると私の腕を掴んでいた男が、私の背中をポンと叩き、部屋に入る様に促す。
それに抵抗する事も無いままそっと部屋に足を踏み入れると、男は私から手を離し、そのまま襖を閉め部屋から出て行った。