鬼守の巫女
「二度と私を兄と呼ぶな」
朧源はとても冷たい瞳でそう呟くと、刺す様に鋭い視線を馨さんに向けた。
馨さんはそれに臆する様に一歩後ずさると、グッと唇を噛み締め、悲しそうに朧源を見つめている。
「下がれ。二度と同じ事を言わせるな」
朧源がそう小さく呟くと、馨さんは小さく頭を下げ、静かに部屋の出口へと向かって歩いて行く。
「……馨さん」
小さく彼女の名を呼ぶと、馨さんはそっと顔を上げ切なそうに私を見つめ、そのまま何も答えずに足早に部屋から出て行ってしまった。
彼女の遠くなっていく足音を聞いたまま、目の前の男を見つめた。