鬼守の巫女

「出来ないか?それならやはりお前は、ただの口だけの女だったようだ」

唖然とする私に向かって朧源はそう言うと、嘲笑う様に笑みを浮かべた。

朧源のその言葉に、更に強く拳を握り締める。

その間も、様々な光景が頭に広がっていた。

優しい父の記憶。

火伏さんの笑顔。

母の悲しい記憶。

断片的に映し出されるその記憶に、ズキズキと酷く胸が痛んだ。

……覚悟を決める。

誰かを救う覚悟。

……そう……私は二人を救いたい。

手の平に爪が食い込み、そしてそこから音も無く……真っ赤な鮮血が滴り落ちる。

しかしそれを無視して顔を上げると、涙の溢れる瞳で真っ直ぐに朧源を見つめた。
< 474 / 912 >

この作品をシェア

pagetop