鬼守の巫女
「出来ないか?それならやはりお前は、ただの口だけの女だったようだ」
唖然とする私に向かって朧源はそう言うと、嘲笑う様に笑みを浮かべた。
朧源のその言葉に、更に強く拳を握り締める。
その間も、様々な光景が頭に広がっていた。
優しい父の記憶。
火伏さんの笑顔。
母の悲しい記憶。
断片的に映し出されるその記憶に、ズキズキと酷く胸が痛んだ。
……覚悟を決める。
誰かを救う覚悟。
……そう……私は二人を救いたい。
手の平に爪が食い込み、そしてそこから音も無く……真っ赤な鮮血が滴り落ちる。
しかしそれを無視して顔を上げると、涙の溢れる瞳で真っ直ぐに朧源を見つめた。