鬼守の巫女

……母もこんな事を思ったのだろうか。

先代朧源……私の本当の父に抱かれた時、一体何を思っていたのだろうか。

そんな事を考えている間も私の涙が涸れる事は無い。

……こんな状況になって……それでも私は思ってしまう。

偽善でも、甘くても、愚かでも何でもいい。

……救えるモノ全てを救いたいと思う事は……本当に間違っていたのだろうか。

運命は……変えられる。

そう信じる事は罪だったのだろうか。

……分からない。

そっと視線を落とすと肌蹴られたベストに付いている、猫のバッジが目に留まる。

バッジに描かれた不思議な猫の円らな瞳は、まるで私の選択を待つかの様に静かに私を見つめている。
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