鬼守の巫女

「石と巫女を返してもらおうか」

朧源のその言葉に、石を握ったままの拳に力が入る。

「非常に残念だが……それは断る」

魏戎がニヤリと笑ってそう答えると、朧源は可笑しそうにクスクスと笑った。

「お前には巫女を殺せないとは思っていたが、まさか巫女を助ける為にこの場に姿を現すとは思っていなかった。一世一代の賭けだったのだが」

朧源はそう言うと、真っ直ぐに私を見つめる。

「お前は私の期待通りの……いや、期待以上の巫女だよ。……凪」

そう言って朧源は何が可笑しいのかクスクスと笑い続け、それから小さく手を上げた。
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