鬼守の巫女

「ごめんね昇馬。僕はもうここには居られない」

「稔!!どうして!!」

小金井さんがそう声を荒げると、木住野さんは真っ直ぐに小金井さんを見つめた。

「僕は君の様に一族の為に……結界の為に生きる事は出来ないんだ。僕は自分が可愛いからね。自分の望む……今を生きたい」

木住野さんのその答えに小金井さんはギュッと強く剣を握り締める。

「確かに結界は色んなモノを救っているのかもしれない。でもね僕は知っている。……その裏で犠牲になっている沢山のモノを。僕はそれに気付かないフリをする事は……もう出来ないんだよ」

木住野さんはそれだけ言うと、静かに目を閉じる。
< 520 / 912 >

この作品をシェア

pagetop