鬼守の巫女
第四十二章 懐旧の香
火伏さんと父の部屋を出ると、時刻はすでに深夜一時を過ぎていた。
「……俺も今日は寝るわ。色々あって疲れたから。じゃ、おやすみ」
そう言って火伏さんは自分の部屋へと向かって行った。
それから私はと言うと、一人でリビングのソファーに座り、ボーっと窓から見える月を見上げていた。
皆は寝てしまったのか、この広い館の中はシンと静まり返っている。
その静寂の中で月を見上げたまま、色々な記憶が私の頭の中を廻っていた。