鬼守の巫女
「生まれて間もない昇馬に、彼女は《鬼は憎むべき敵だ》と繰り返し教え続け、一族の誰よりも厳しい修行を昇馬に課しました。昇馬は母親を悲しませたくない想いの為だけに、その辛い修行を文句も言わずにこなし、そして鬼を討つ強さを手に入れた。しかし母親は心と共に体も病み……昇馬の十歳の誕生日にこの世を去りました。《鬼を絶対に赦してはならない》と最後まで繰り返し呟いて」
木住野さんはそう言うと、静かに俯いてしまう。
「昇馬は誰にでも厳しい人間です。でも他の誰よりも自分に厳しいんです。一族を裏切り鬼に手を貸すなんて、彼にしたら有り得ない状況でしょう。それだけに……彼は僕を赦さない。……決してね」
木住野さんはそれだけ言うと、悲しそうに笑った。